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教員からの学びWhat we want students to learn

2021年4月より
生命環境学部就任予定

藤原 伸介教授

【前編】

「超好熱菌」が解き明かす
生命誕生の謎

ヒトに近い遺伝子システム、極限環境でも生息

 目に見えないほど小さな微生物が、集団になると味噌やしょうゆ、ヨーグルトなどの発酵食品を作り出したり、病気を引き起こしたりして大きな力を出します。最近の研究では、ある病気の人の大腸に、健康な人の糞便を移すことで症状が改善することが示されています。糞便の多くは微生物ですから、微生物が人の健康を支配していることになります。しかも、この微生物、極寒地や灼熱の地、酸性、アルカリ性など、地球上のいたる環境で生息できます。すごいなと興味を持ち、様々な微生物を研究しています。長く興味をひかれているのが、熱水鉱床や温泉など、90℃以上の場所で生きる超好熱菌です。大腸菌の半分ぐらいの遺伝子の数しか持たない下等な原核生物でありながら、遺伝子ひとつひとつの塩基配列はヒトに近い。つまり、我々高等真核生物が持つ遺伝子システムを持つ原核生物なのです。超好熱菌の研究を通し、生き物の起源、進化、誕生の謎に迫っていきたいと考えています。

01

耐熱性酵素の新技術で人々の健康を支えたい

 超好熱菌の中に含まれる酵素は煮ても死滅せず、活性が維持されたままです。例えば大腸菌に超好熱菌のDNAを注入して酵素を発現させます。その後、鍋で大腸菌を煮れば、大腸菌は熱に弱いため、超好熱菌由来の酵素だけが活性を持った状態で残ります。この耐熱性酵素は有機溶媒中でも変性せず、アルコールなどを入れても活性が残るため、うまく活用すれば人に役立つ医薬品原料の合成に活かせます。DNAを何万倍にも増幅させる技術は、PCR法といって、基礎研究以外にも遺伝子診断や犯罪捜査などに利用されますが、標的とするDNA以外のDNAを増幅させてしまうという難点がありました。私は学生と一緒に研究を重ね、複製の際に機能する別のタンパク質を入れることで、目的外DNAの増幅を抑える技術を開発しました。

02

注目の「アグマチン」を含む機能性発酵食品を開発

 研究室では90~100℃の環境下で超好熱菌を培養し、高温でも中の酵素が変質しない特性を生かし、医療や食品分野などへの活用法を探っています。学生の関心がより高い、食品微生物の研究もしています。最近では、ある企業の方と一緒に麹菌を用いた機能性発酵食品を開発しました。ポリアミンは健康長寿に関与する物質ですが、そのひとつアグマチンは炎症を抑え、脳機能の維持にも効果が高いと注目されています。麹菌が蒸米に菌糸を伸ばして成長する際にpHを制御すると、遺伝子の発現動態が変化し、アグマチンが高蓄積します。酒や甘酒を詳しく解析し、アグマチンを非常に多く含む機能性糖化液(甘酒)の合成法を見出しました。研究遂行のため、酒造免許も取りましたよ。我々の作った高機能糖化液は甘ずっぱくてとても美味しく、どこかの企業が商品化してくれるとありがたいと思っています。最近、海洋性珪藻に超好熱菌のアグマチン合成酵素のDNAを入れて、アミノ酸からアグマチンを合成できるスーパー珪藻を作りました。もちろん組換え生物です。ただ、煮沸してしまえば、生き物からただのモノにかわります。単なる珪藻土の土です。ところがこれにアミノ酸液をかけると超好熱菌由来の耐熱性酵素は活性が残っているので、アグマチンをバンバンつくる。アグマチンは単価が高いので、低コストで高効率な生産法になるわけです。

03

学生を海外学会に派遣、グローバルな研究者育成

 いまの生命科学科は、生物個体や細胞を対象として、それらを有効活用する技術を研究する学科です。医療や健康の基礎や、医療分析の原理についても学ぶことができます。生命環境学部(設置構想中)は、PBL科目(課題発見・解決型学習)をより充実させます。PBL科目は海外でも開講されます。バリ島で開講する「熱帯生物学」などはサンゴ礁観察やマングローブ植林もできて面白いですよ。10日間ほどのプログラムですが、参加者は逞しくなります。研究室の学生にも海外に出る機会をできるだけ作り、グローバルな研究者を育てたいとも考えています。地球温暖化が問題となっている現在、新学部で環境問題に取り組みたいと考えている高校生もいるでしょう。環境修復も大切ですが、現実的には変化する環境を見据えて、新しい技術を作り、備えることも重要でしょう。新学部では環境修復だけでなく、例えば、太陽エネルギーを効率的に電気に変える高機能デバイスの開発や、人工光合成など、環境変化を前提とした技術開発に取り組むこともできます。
※新設学部の名称は仮称です。また、概要等は予定であり、今後、変更になる場合があります。

04

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