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研究ピックアップ

KSCではどんな研究が進められているのか?
関学が誇る最先端の研究の一部を紹介します。

生命環境学部 生命医科学科

酸素濃度の変化と、寿命や老化の深い関係について。

今岡 進 教授

※この記事は2020年7月に神戸新聞に掲載されたものです。

環境というと、地球環境のようなグローバルな環境を連想すると思います。私たちはからだの中の微細(ミクロな)環境、特に酸素濃度の変化に注目して研究しています。

酸素は私たちが生きていくためには必要不可欠です。酸素はグルコースの燃焼(糖代謝)によって私たちが運動したり考えたりするのに必要な、莫大なエネルギーを供給します。

酸素は私たちの体にとって重要なので、細胞は酸素濃度を感知するシステムを持っています。システムの中心的役割を果たすタンパク質HIFを発見した米ジョンズホプキンズ大のグレッグ・セメンザ教授には昨年、ノーベル医学生理学賞が授与されました。

細胞分裂は低酸素(酸素濃度が低い状態)に始まり、酸化ストレスに終わるといわれています。すなわち、低酸素は発生・再生と深く関わり、酸化ストレスは寿命や老化と深く関わっています。

発生過程においては細胞分裂を繰り返して細胞の数が急激に増え、低酸素状態になっていると考えられています。ここでHIFが働き、血管や心臓などを作ります。

一方、年をとってからの激しい運動、虚血・再灌流(血液の流れが止まってから再開すること)は活性酸素を増加し、それによって起こる酸化ストレスが老化を促進すると考えられています。筆者の研究においては、酸化ストレスを抑制することで、寿命が1割程度は伸びることを明らかにしています

老化を支配している遺伝子として「クロトー遺伝子」が発見されました。クロトーとはギリシャ神話に出てくる神様で、ろうそくの燃焼により、その人の寿命を決定しているとされます。燃焼が酸素と結合することや、人のエネルギーの元が燃焼と似ていることが発見されるずっと前から、燃焼によって寿命が決定されるという神話はとても興味深いものがあります。

最近、兵庫医科大学の中込先生、松山先生によって、iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)が脳梗塞で傷ついた部位の「脳梗塞巣」で発見され、治療応用が期待されています。筆者自身も脳梗塞の経験者であり、iSC細胞ができるメカニズムに興味を持ち、その研究を行っています。

脳梗塞は脳血管が詰まる病気であり、梗塞巣は低酸素状態になっています。低酸素状態であることが、iSC細胞の生成と深く関わっていると考えています。

筆者や助教の佐久間博士らはiSC細胞の形成を促進する薬剤や、iSC細胞から血管や神経ヘの分化を促進する薬剤を探索しています。

今岡 進 教授
IMAOKA Susumu
今岡 進 教授
細胞の低酸素応答、免疫応答異常、環境ホルモン(内分泌かく乱化学物質)に対する応答について研究。

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