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教員からの学びWhat we want students to learn

2021年4月より
理学部就任予定

高橋 功教授

【前編】

物性物理学最大の謎
「ガラスの正体」に挑む

薄さナノメートルの「超薄膜ガラス」をX線分析

 私たちにとって身近なガラスは、物理学の世界では有名な未解決問題のひとつとされています。硬くて固体(結晶)のようでありながら、結晶特有の「原子や分子が規則正しく並ぶ」という構造をとらず、内部の配列は不規則。このため、ガラスは原子や分子の動きが非常に遅い液体であるという説と、結晶とも液相とも違う別の相だという説があります。そもそも冷やされた液体がどの時点でガラスになったといえるのか、ガラスというものの定義自体が不明瞭なのです。私は1ナノメートル(10億分の1メートル)まで薄くした「薄膜ガラス」を作り、強力なX線ビームを用いてガラスや結晶の構造や性質を調べています。薄膜ガラスには温度が上がると収縮するなどの、通常の物質はおろか厚いガラスにも見られない現象が幾つも現れるのですが、こうした現象を解明することでガラス一般の本質が見えてくるのではと期待しています。

01

新しい「複雑系表面物理学」の分野を作りたい

 研究室ではガラスや高分子・コロイドなど「複雑系」と呼ばれる物質全般を薄膜にして、それらの表面や界面を研究しています。私が研究を始めた当時は物質表面や薄膜の研究はX線では出来ないと考えられていました。その後、シンクロトロン放射によって発生するX線で薄膜表面に現れる原子・分子の独特の配列、熱を加えた際の運動状態などを調べられるようになり、今はX線でも詳細に調べられることが実証されています。関学の研究室のX線装置を用いた研究に加えて、大型放射光施設SPring-8などでも実験をしています。この分野の研究はまだ十分ではなく、研究室では日々、新しい知見に出合えます。徹夜もいとわず研究に打ち込む学生たちと一緒に複雑系表面物理学という新しい物理学の分野を立ち上げたいというのが私の夢です。

02

テクノロジーは「さらに薄く・小さく」へ

 テクノロジーは急速に薄く小さく、軽薄短小の方向に向かっています。昔は使い道が考えられなかったぺらぺらの薄いガラスは、スマートフォンのディスプレィなどに使われていますし、今後はさらに薄いガラスがますます様々な、これまで予想もつかなかった場面で使われていくでしょう。高分子ガラス(プラスチック)の薄膜についても、電圧をかけたり光を通したりして、どんな応答が起きるかを調べています。この研究は、電位差によって微小なひずみを検出できる「ひずみセンサー」や、光通信で使われる「光スイッチ」などに高分子を活用する技術につながると考えています。厚さ1マイクロメートル(100万分の1メートル)の高分子膜までは随分と研究が進んでいるものの、ナノメートルになると、分からないところがまだまだあるのです。

03

「大きな応用の鍵は基礎にあり」肝に銘じて

 2021年に開設予定の理学部※では、知的好奇心を満足させる学びを深めることができます。例えば物理学者の中には、なぜ我々の世界に時間や空間が存在するのかというような根本的な疑問に対して、実験、観察、数学に基づいて研究している人も沢山います。高校生の皆さんには、その様な、できるだけ大きな「当たり前」に挑戦してほしいと思います。今の世の中、直感ばかりが先走っているようにも感じられますが、理学部での学びを通してそのような世界を生き抜くための強靭な論理力も身につくはずです。基礎というのは、応用のゆりかごなのです。がんの検査や手術に使われるX線CT、MRI、PET-CT、レーザー光などは、もう全て、1925年から1926年にかけて急速に発展した量子力学という非常に基礎的な分野の応用であると言っても間違いではありません。信じられます? 量子力学では、例えて言えば、一匹の猫が生きている状態と死んだ状態を同時に足し合わせて計算を行うのです。それほどに基礎的な、浮世離れした学問が今日の先端技術を支えている訳です。大きな応用の基となるものを築く。そんな気持ちを持ちながら学んで欲しいと思っています。
※新設学部の名称は仮称です。また、概要等は予定であり、今後、変更になる場合があります。

04

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