2024.04.08

次代の建築家として建築分野のポストSDGsを探る

建築学部建築学科3年 岸田早映香

かっこよさには理由がある

1年生のうちは教養を身につける科目が多かったのですが、2年生になって建築の専門分野を学ぶ授業や実習が増えてきました。中でも印象に残っているのが設計演習。私はそれまで漠然とかっこいい住宅をつくりたいと思っていましたが、この時に指導してくださった米田明先生は、「この立地条件ならどういう間取りがふさわしいのか」「どういう理由でこの構造・機能を取り入れるのか」などを理論的に説明してくださいました。かっこいいと感じる建物には細部まで理論的な理由があることを知る機会をくださった米田先生の指導を受けたいと思い、3年生のゼミの仮配属で米田先生の研究室に入りました。

実際に見て触れて聞いて視野を広げていく

地域や時代によって建築の作られ方はさまざまです。そこで米田先生の研究室では、時代背景や用途が異なるさまざまな建築物をよく見学しに行きます。京都の日本庭園・歴史的建造物を訪れた時は、自然を生かして居心地のよい空間をつくるという日本人の美的感覚に触れることができました。また、兵庫県立美術館では館長から「アートと建築の関係」について話を伺ったほか、米田先生のかつての教え子が設計を担当した高槻城公園芸術文化劇場にも訪問しました。日本の林業の持続的な保護という観点から木の小部材を積極的に内外装に用いたこと、周辺住民への配慮の方法、さらには現場の声を反映して床だけでなく、ドアの開口部のコンクリートに磨き加工を取り入れたことなどを伺いました。設計のための引き出しが増えたと感じています。

王子公園再整備のプラン策定に学生の立場から提言する

現在、神戸市の王子公園では再整備計画が進んでいます。この再整備に伴い、関西学院大学も同公園内に新キャンパスを設置する予定があり、本学の学生からも提案をしようと3年生の9月から10月末の2カ月間で再整備プランの策定に取り組みました。先輩の卒業生がかつて演習課題でリサーチしつくった王子公園の再開発プランをベースに、阪急電鉄・王子公園駅と公園、王子動物園と大学を直接結ぶ遊歩道を設置するほか、大学の施設を一般の方々に開放し、人々の交流を活発にすることをめざしました。また、地域住民の「再整備で緑が減るのではないか」という声を受け、神戸市案ではビルだった駐車場を地下に設置し、その地上を緑地にする案を神戸市に提出しました。私たちの案が反映され、よりよい公園になるといいなと思っています。

地域の特徴を生かすことを再確認したアデレードでの研修

私にとって2年生の春季休暇に体験したオーストラリア・アデレード大学での建築学国際プログラムも大きな学びの収穫がありました。現地の建築設計事務所を訪問したほか、同大学の学生とグループを組み、人通りの少ない路地を活性化させるという街づくりの課題に取り組みました。歴史や文化、立地条件、人の動きを調べ、路地の両端に駅と広場があることに注目し、両端をつなげるケーブルカーを設置して利便性を図るほか、アデレードの特徴である建物の壁などに絵を描くウォールアートを取り入れて、明るくにぎわいをつくるというプランを考案しました。地域の特性を生かし、完成後の人の動きまでイメージすることの重要性を再確認できました。

これからの建築家に必要な視点を身につけていきたい

建物には周囲との調和を意識するなど公共に対する配慮のほか、「歴史や文化、宗教、芸術等を反映させる」「安心・安全、快適性の追求」「環境にやさしいエネルギーシステムの採用」などが求められます。さらに新たなテクノロジーが私たちの生活を変えることもあるため、テクノロジーの進化にも対応する必要があります。これまでの学びを通して、SDGsに配慮するのは建築家として当たり前だと実感。米田先生は「これからの建築家にはテクノロジーとアート、そして『どのように複雑な機能をまとめるのか』といったマネジメントの視点が欠かせない」とおっしゃっています。私もSDGs以降を見据え、建築学部の学びを通してこうした視点を身につけたいと考えています。

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