生命環境学部

生命環境学部

 2021年4月 NEW 


●生物科学科
生物を科学的に分析し、環境と生命の共生を考える

生物科学科では、植物や昆虫、微生物まで、地球上に生きるさまざまな生物について学び、その活用を考えます。データサイエンスの手法を用いて、生態系や生命現象のデータ情 報を生物機能の分子レベルで解析。分子遺伝学から遺伝子工学、植物改良、食品微生物まで幅広い分野の教育研究を展開します。学びの特徴として、多彩な実験・演習やフィールドワークを通じた体験学習があります。生物機能の活用を通じて再生・共生型社会の構築に貢献するため、生命を分子レベルで分析・評価するための知識や技術を身につけます。


●生命医科学科
生命科学の基礎から医学応用まで学べる

生命医科学科では、数学、物理学、化学、情報科学などに基づく生命科学の知識および技能の修得を通じて、生命医科学分野の基礎を身につけます。学びを通して、ヒトを含む哺乳動物に関する生命現象を解明し、基礎医学分野へ応用することで人の疾病治療や健康維持に役立てることをめざします。病気の予防や治療に役立つ基礎生命科学に加えて、医学・薬学・理学・工学など幅広い分野を学修し、生命に対する健全な倫理観と専門知識をもって、基礎医学系分野と医学系情報学分野の研究の推進をめざします。


●環境応用化学科
化学的アプローチで環境にやさしい社会を創る

化学的な視点から、環境・資源・エネルギーなどに代表される地球規模での制約となる課題の解決に寄与し、環境問題に貢献できる人材の育成をめざしています。自然科学の基礎をしっかりと身につけて知識の土台づくりを行い、幅広い知識と深い専門性を修得できる教育研究を実践します。化学の基礎に加えて数学、物理学、生物学、地球科学などを十分に学修することにより、環境問題に取り組むための基礎能力を身につけ、グリーンイノベーションの観点から地球環境と物質との関係について専門的により深く学びます。


●基本DATA
学生数 705名  募集人員 228名  専任教員数 53名
●取得可能な資格
[学科共通]・中学校教諭一種免許状 理科 ・高等学校教諭一種免許状 理科 ・学校図書館司書教諭・国際バカロレア教員認定証(DP) 

学生インタビュー



市川来実さん
環境応用化学科1年
大阪・大阪女学院高校出身

■学部の学び
高校の化学を大学の化学に発展させる科目を履修

高校の化学の実験で目の前で反応が起きるのを見て「有機化学は面白い」と感じたことに加え、幼い時から「地球温暖化が進む」と言われていたことから、化学の力で環境問題の解決に貢献できたらと思い、環境応用化学科に進学しました。現在は研究を行うための基盤づくりとして高校の化学の知識を大学の化学に発展させる科目や実験演習を履修しています。器具の基本的な使い方の習得とともに、理論通りにいかなかった場合、何に問題があったのかを考察し、それをリポートにまとめる訓練を行っています。

■もう一つの学び
キャンピングキャンパスやAIなど幅広い学びが魅力

学部の学びに加えて、「何か面白そうだし、参加したら友人ができるのでは」と思い、キャンピングキャンパスに参加しました。また、同じように「面白そう」と思ってAI活用人材プログラムにもチャレンジしています。機械学習の基礎や音声・画像認識など、回を増すごとに新しい知識が増えていくのを感じています。
10歳年上で関西学院大学出身、化学の研究者である知人が私の家を訪問した際、父が好きな宇宙の話で盛り上がっていたことがあります。この知人の姿を見て、私も自分の専門分野以外の話ができる人になりたいと思うようになりました。その点からも自分の専門とそれ以外の分野を並行して学ぶダブルチャレンジは私を成長させてくれる機会だと思っています。

主な研究紹介

 C4型植物

 地球温暖化に対応できる農作物の育種をめざす

地球温暖化の進行による農作物生産量の激減が危惧される中で、作物の環境耐性を強化し、生産性を維持するための品種改良が強く求められています。C4植物はCO2濃縮機能により、水分や窒素源の利用効率が高く、乾燥・高温地帯での生産性が非常に高いことが知られています。当研究室では、キク科Flaveria植物を用いてC4植物の進化過程を、遺伝子、細胞、個体レベルでさまざまな角度から解明する研究を行っています。この進化過程をヒントに作物の品種改良をめざします。

 植物環境適応学研究室 宗景ゆり 教授


 嚢胞性線維症の治療薬

 異常な膜タンパク質を除去する分子メカニズムを研究

CFTRという膜タンパク質の遺伝子変異が原因で発症し、肺の機能障害などを引き起こす「嚢胞性線維症(CF)」という遺伝病があります。いまだ治療方法が確立しておらず、多くの患者が40歳までに亡くなる難病です。本研究室では、遺伝子変異や環境ストレスにより生じた異常な膜タンパク質がどのように細胞から除去されるのか、その分子メカニズムを研究しています。また、異常な膜タンパク質を正常化する化合物を探索し、治療薬開発をめざして海外研究者や製薬企業との共同研究も行っています。

 膜タンパク質制御学研究室 沖米田 司 教授


 ナノ物質の光機能

 光エネルギーの高度利用を目的にナノ物質を研究

数~十数ナノメートルの大きさの物質は、分子や原子が数千個集まって構成されており、ナノ物質やナノ材料と呼ばれます。このナノ物質は、単独の分子・原子とは全く異なる性質を示し、発光ダイオード、ELディスプレイ、太陽電池、さらにはバイオイメージングなどに用いられています。研究室では、「さまざまなナノ物質を作る」「ナノ物質を並べて機能化する」「ナノ物質の光機能を調べる」「ナノ物質の光機能を制御する」ことを中心に、光エネルギーの高度利用を目的として研究を行っています。

 ナノ材料光科学研究室 増尾貞弘 教授

研究室紹介


▶紹介するのは…生命環境学部 生命医科学科 矢尾 育子研究室



矢尾育子 教授
大学卒業後、ERATO高井プロジェクトに参画。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了、博士(医学)。
三菱化学生命科学研究所、
関西医科大学医学部、
浜松医科大学光先端医学教育研究センターを経て
関西学院大学に赴任。

脳や神経細胞など生体に存在する物質を「目に見える」形にして解析

私の研究室では、脳や神経細胞、生体などに存在する脂質やアミノ酸など多様な物質の分子を「目に見える」形にする各種イメージング手法の開発・イメージング解析を取り入れた研究を行っています。この研究はさまざまな病態の解析につながるもの。例えばアルツハイマーの原因とされる物質が脳の神経細胞に与える影響を調べた研究は、脳内環境および神経疾患に対する治療、症状の進行抑制、リハビリテーションに寄与すると期待されています。また、2023年には私がこれまでに複数の研究に取り入れてきた「質量分析イメージング」を学生と共に行える環境が整いました。
学生の皆さんには、新しいイメージング手法の開発をはじめとする多彩な研究に取り組んでもらいます。研究室がめざしているのは、学生の皆さんがお互いに学び合い、助け合う「ラーニングコミュニティ」になること。器具や試薬がなくなりかけていたら進んで補充するなど、自分のことだけでなく研究室全体のことを考えるようになって欲しいと思います。その一方で自主性を重んじ、何事にも自己責任が伴うことを自覚するようにとも指導しています。研究活動を通して、自分で問題を見つけ、仲間と協力し合いながら自分で解決策を導き出せる人材に育って欲しいと思っています。


▶このゼミの卒業生



パナソニックアドバンストテクノロジー株式会社
研究開発部門第二開発部
森田夕月
2019年度 理工学部 生命医化学科※卒業
2021年度 理工学研究科 博士課程
前期課程修了
※2021年4月より理系4学部開設。
この学部学科名はそれ以前のものです。

企業と先生の共同研究に参画。特許申請に発明者の一人として貢献

学部生の頃は別の研究室で「脳と痛み」を研究していましたが、神経活動を明らかにするために「新しい解析方法をつくる」研究に興味を持ち、大学院進学を機に矢尾研究室に入りました。矢尾先生から与えられた課題は「トポロジー理論を用いて生体組織の状態を効率的に可視化することができる画像解析方法の開発」です。これは島津製作所と矢尾先生の共同研究で、何もないところからのスタートでした。それまでプログラミングを学ぶ機会が少なかったのですが研究で必要になり独学で習得するなど、矢尾先生と話し合いながら手探り状態で開発に挑みました。「本当にできるのか」という不安もありましたが、学内外の先生や研究者がアドバイスをくださり、やりとげることができました。この開発の成果を日・米で特許出願することになり、発明者の一人として貢献できたことに大きな喜びを感じています。現在私は車載ソフトウェアの開発に携わっています。大学で学んだものとは異なる分野への挑戦ですが、学生時代にゼロから新たなものを開発した経験が生かされると思っています。