生命環境学部

生命環境学部


●生物科学科
生物を科学的に分析し、環境と生命の共生を考える

生物科学科では、植物や昆虫、微生物まで、地球上に生きるさまざまな生物について学び、その活用を考えます。データサイエンスの手法を用いて、生態系や生命現象のデータ情報を生物機能の分子レベルで解析。分子遺伝学から遺伝子工学、植物改良、食品微生物まで幅広い分野の教育研究を展開します。学びの特徴として、多彩な実験・演習やフィールドワークを通じた体験学習があります。生物機能の活用を通じて再生・共生型社会の構築に貢献するため、生命を分子レベルで分析・評価するための知識や技術を身につけます。


●生命医科学科
生命科学の基礎から医学応用まで学べる

生命医科学科では、数学、物理学、化学、情報科学などに基づく生命科学の知識および技能の修得を通じて、生命医科学分野の基礎を身につけます。学びを通して、ヒトを含む哺乳動物に関する生命現象を解明し、基礎医学分野へ応用することで人の疾病治療や健康維持に役立てることをめざします。病気の予防や治療に役立つ基礎生命科学に加えて、医学・薬学・理学・工学など幅広い分野を学修し、生命に対する健全な倫理観と専門知識をもって、基礎医学系分野と医学系情報学分野の研究の推進をめざします。


●環境応用化学科
化学的アプローチで環境にやさしい社会を創る

化学的な視点から、環境・資源・エネルギーなどに代表される地球規模での制約となる課題の解決に寄与し、環境問題に貢献できる人材の育成をめざしています。自然科学の基礎をしっかりと身につけて知識の土台づくりを行い、幅広い知識と深い専門性を修得できる教育研究を実践します。化学の基礎に加えて数学、物理学、生物学、地球科学などを十分に学修することにより、環境問題に取り組むための基礎能力を身につけ、グリーンイノベーションの観点から地球環境と物質との関係について専門的により深く学びます。


●基本DATA
学生数 705名  募集人員 228名  専任教員数 53名
●取得可能な資格
[学科共通]・中学校教諭一種免許状 理科 ・高等学校教諭一種免許状 理科 ・学校図書館司書教諭・国際バカロレア教員認定証(DP) 

学生インタビュー



末神 紗希さん
生物科学科3年
兵庫・姫路西高校出身

■学部の学び
遺伝子組み換え技術を研究し世界の課題に貢献したい

私は遺伝子組み換え技術によって病気や気候変動などに強く、収穫量が高い野菜・穀物をつくることが世界の食糧危機を解決する手段の一つと考えています。ただし遺伝子組み換え技術には安全性や倫理面での問題が指摘されており、私はこれらの問題を技術で解決したいと思い、生命環境学部に入学しました。現在は植物と微生物の共生をテーマとする武田直也先生の研究室で、共生におけるCaスパイキングの機能解析を目的として、CaイオンのインジェクションやCaged Ca proteinを用いることでCaスパイキングを人工的に再現し、下流共生応答反応の探索を行っています。

■もう一つの学び
思考力を磨くとともに多面的な見方を修得する

1年生の春学期に履修したハンズオン・ラーニングの入門科目である「社会探究入門」では、「自分とは何か」「社会とは何か」など抽象度の高い文章を読んでグループ討論をし、その結果を発表するという過程を通して、思考力と「読む」「話す」「聞く」「書く」などの基礎力を養うことができました。この科目は総合政策学部の学生が多数履修しており、専攻の違いで「そんな視点で考えるのか」という発見があり、さまざまな価値観があることや多面的な見方の大切さを知ることができました。これは今後の研究にも大いに役立つと感じています。

主な研究紹介

 計算論的神経科学

 計算機と数理モデルを用いて脳の情報処理機能を解明する

脳が、ニューロンと呼ばれる神経細胞間で電気信号(パルス)をやりとりすることによって情報の伝達・処理を行っていることは知られていますが、個々のニューロンのパルスのやりとりを観察するだけでは、脳がその情報をどのように目的に適合するように処理しているのかという機能は捉えきれません。本研究室では、機械学習やシミュレーションなどの手法を援用し、数理モデルを導入することによって、地上最強の情報処理装置である脳の仕組みの解明に取り組んでいます。

 計算神経科学研究室 三浦佳二 教授


 全能性細胞

 生殖細胞の仕組みを分子レベルで解明する

ヒトの発生はたった1つの細胞である受精卵から始まります。すなわち受精卵はすべての細胞を生み出し、それを正確に配置することで個体形成を行うことができる「全能性細胞」なのです。本研究室では、この生殖細胞の能力・仕組みを解き明かし、その仕組みを人工的に再現することをテーマにしています。実現すれば、多能性幹細胞からの生殖細胞生成や人工胚の作製が可能となり、再生医療、生殖補助医療の基盤となるような新規技術開発にもつながると期待されています。

 エピゲノム幹細胞制御学研究室 関由行 教授


 環境試料

 地球表層の元素を解析し過去の情報を未来に生かす

地球温暖化や資源の枯渇、エネルギー問題など、人類はさまざまな環境問題に直面しており、私たちは地球とどのように共存していくか問われています。本研究室では、地球表層に存在するさまざまな試料(河川水や地下水、エアロゾルや降雨、土壌や植物など)について、無機元素の濃度・同位体・化学種を解析することによってこれらの問題にアプローチしています。例えば、過去の地層の含有元素を解析し、環境の変化を化学的に示すというのもその一つで、未来の環境予測に役立ちます。

 地球環境化学研究室 谷水雅治 教授

研究室紹介


▶紹介するのは…生命環境学部 生命医科学科 矢尾 育子研究室



矢尾育子 教授
大学卒業後、ERATO高井プロジェクトに参画。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科修了、博士(医学)。
三菱化学生命科学研究所、
関西医科大学医学部、
浜松医科大学光先端医学教育研究センターを経て
関西学院大学に赴任。

脳や神経細胞など生体に存在する物質を「目に見える」形にして解析

私の研究室では、脳や神経細胞、生体などに存在する脂質やアミノ酸など多様な物質の分子を「目に見える」形にする各種イメージング手法の開発・イメージング解析を取り入れた研究を行っています。この研究はさまざまな病態の解析につながるもの。例えばアルツハイマーの原因とされる物質が脳の神経細胞に与える影響を調べた研究は、脳内環境および神経疾患に対する治療、症状の進行抑制、リハビリテーションに寄与すると期待されています。また、2023年には私がこれまでに複数の研究に取り入れてきた「質量分析イメージング」を学生と共に行える環境が整いました。
学生の皆さんには、新しいイメージング手法の開発をはじめとする多彩な研究に取り組んでもらいます。研究室がめざしているのは、学生の皆さんがお互いに学び合い、助け合う「ラーニングコミュニティ」になること。器具や試薬がなくなりかけていたら進んで補充するなど、自分のことだけでなく研究室全体のことを考えるようになって欲しいと思います。その一方で自主性を重んじ、何事にも自己責任が伴うことを自覚するようにとも指導しています。研究活動を通して、自分で問題を見つけ、仲間と協力し合いながら自分で解決策を導き出せる人材に育って欲しいと思っています。


▶このゼミの卒業生



パナソニックアドバンストテクノロジー株式会社
研究開発部門第二開発部
森田夕月
2019年度 理工学部 生命医化学科※卒業
2021年度 理工学研究科 博士課程
前期課程修了
※2021年4月より理系4学部開設。
この学部学科名はそれ以前のものです。

企業と先生の共同研究に参画。特許申請に発明者の一人として貢献

学部生の頃は別の研究室で「脳と痛み」を研究していましたが、神経活動を明らかにするために「新しい解析方法をつくる」研究に興味を持ち、大学院進学を機に矢尾研究室に入りました。矢尾先生から与えられた課題は「トポロジー理論を用いて生体組織の状態を効率的に可視化することができる画像解析方法の開発」です。これは島津製作所と矢尾先生の共同研究で、何もないところからのスタートでした。それまでプログラミングを学ぶ機会が少なかったのですが研究で必要になり独学で習得するなど、矢尾先生と話し合いながら手探り状態で開発に挑みました。「本当にできるのか」という不安もありましたが、学内外の先生や研究者がアドバイスをくださり、やりとげることができました。この開発の成果を日・米で特許出願することになり、発明者の一人として貢献できたことに大きな喜びを感じています。現在私は車載ソフトウェアの開発に携わっています。大学で学んだものとは異なる分野への挑戦ですが、学生時代にゼロから新たなものを開発した経験が生かされると思っています。