建築学部

建築学部

グローバルな視野で建築と都市の未来を創造する

建築学部は、デザイン、マネジメント、工学、人文社会など幅広い視点から建築・都市を学ぶカリキュラムを通して、国際社会・地域社会で活躍する建築家、都市計画技術者、まちづくりリーダーの育成を図ります。また、都市の成熟化が進む日本の中で新たな課題に挑戦することはもちろん、建築を通して世界を舞台に活躍できる人材の育成もめざしています。世界の国・地域は、それぞれ文化や考え方が異なります。そこで国内外のフィールドワークを充実させ、その国・地域の現場理解、課題発見、課題解決への力を育みます。

●基本DATA
学生数 421名  募集人員 132名  専任教員数 18名
●取得可能な資格
・一級建築士・二級建築士 ・木造建築士試験受験資格 ・1級・2級建築施工管理技術検定受験資格 ・学校図書館司書教諭 ・国際バカロレア教員認定証(DP)

学生インタビュー



川本 真妃さん
建築学科2年
大阪・天王寺高校出身

■学部の学び
授業の中で出会った構造設計の専門家という目標

1年生の春学期に「建築・都市デザイン概論」、2年生の秋学期に「構造デザイン」を履修し、構造設計の実務家でもある荒木美香先生から変わった構造の建物を紹介していただき、構造設計に興味を持ちました。また、デザインで著名な建築士に対しても構造の専門家という立場からアドバイスをするという役割を担っていることを聞き、「優れたデザインの建物も構造設計がなければ実現しない。私は構造設計の専門家をめざそう」と決意。今は荒木先生の研究室に入ることを目標に、知識の 修得や模型づくりなどに取り組んでいます。

■もう一つの学び
その土地への思いに気づかされた社会探究演習

私は1年生の春学期・秋学期に高齢化・過疎化が進む丹波篠山市の今田地区で学生が調査を行う「社会探究演習」を履修しました。私は「今後、耕作放棄地が増えたらどうするのか」というテーマでインタビュー調査を実施。この調査を通して初対面の人、年齢や立場が違う人と話すことができたほか、住んでいる人がその場所をいかに大切にし、より良くしたいという思いを持っていることを再認識しました。将来、私が構造設計の専門家として仕事をする時に欠かせない「土地・建物のオーナーの思いをくみ取る力」「意匠設計や工事関係者など立場の違う人と話し合う力」を身につける訓練になったと感じています。

学科の特色

 「アート×テクノロジー×マネジメント」時間軸の中で、建築の可能性を追求

これからの建築を考える時、持続可能な社会に向けて建てるだけでなく、建てた後も使い続けていくために建築のライフサイクルを意識することが重要です。また、巨大化、複雑化する建築プロジェクトにおいては、マネジメントという視点も必要になります。建築学部では、「工学」と「芸術」をプラットフォームに、人・もの・場所の関係を読み取り、建築と社会の回路をひらくマネジメントについても学修します。さらに、家具をはじめ住宅などの建築、建築物の集合体としての都市空間にいたる幅広いスケールを横断し、物事を思考する能力を育成。住民に愛され持続可能な都市や街とは何か、固有の地域文化や秩序、美をも含めてその可能性を追究します。

建築のタイムライン
関学建築ではアートとテクノロジーの2領域にマネジメントという独自の視点を加え、時間軸の中でさまざまな建築の可能性を追求します。

 演習やプロジェクトで力をつける多彩で実践的なカリキュラム

本学部では、入学してすぐに演習科目が始まります。1年生では、空間スケッチ、建築製図の方法、建築プレゼンテーション技法などの基礎的なスキルを修得。2年生では、具体的な設計課題を通して単体の建築デザインから都市デザインのスケールまで連続的・一体的に計画提案できる技術を身につけます。このほか、建築デザインおよび都市デザイン演習では、CAD、CG、測量技術、BIM、環境工学や構造分野における解析プログラムの作成、フィールド調査やまちづくりに関するスキルを演習・実習形式で学修。また、自治体、企業、NPO・NGOなどと連携したPBL(課題解決型学習)や、フィールドワークも盛んです。国外も含めて、そこに暮らす人々とともに学ぶことを重視しています。

主な研究紹介

 ユニバーサルデザイン

 誰もが使いやすい空間をめざして生活圏のバリアフリー化を提案

「使いやすいトイレ」とはどんなトイレでしょうか。車椅子使用者にとっては広い個室トイレが「使いやすい」に違いありませんが、視覚に障がいがある人からすれば、広いトイレは空間を把握しにくく「使いにくい」のです。研究室では、障がいを持つ人や高齢者、子ども、妊婦をはじめさまざまな立場の人の行動や意識を調査・分析したうえで、あらゆる人にとって使いやすい環境を模索し、生活空間である住宅や住居地の施設、道、公園、駅などを対象にユニバーサルデザインの適用方法を提案しています。

 ユニバーサル建築・都市計画研究室 柳尚吾 准教授


 アジア都市計画・デザイン

 対話プロセスを大切に地域にあったまちづくりを実現

中国・東南アジア・中東などの開発途上国における都市デザイン・都市計画・交通政策などを研究しています。その国や地域にあったまちづくりを実現するには、文化や宗教的背景、歴史などを考慮するのはもちろん、政府関係者や住民の参加も欠かせません。対話を通じてまちの課題を把握し、解決策を検討するといったプロセスを大切に計画立案しています。近年は、ICTやモビリティ技術の発達など新しい社会状況に対応した都市のデザイン・計画という課題にも取り組んでいます。

 国際都市計画・デザイン研究室 松村茂久 教授


 都市防災

 自然環境と高い次元で調和した、持続可能な建築・都市を考える

安全な建築・都市づくりを進めることで、私たちはより快適で安心な生活を手に入れてきました。しかし、近年の地震、台風、噴火などの自然の脅威を目の当たりにして、こうした建築・都市の安全が完璧ではなく、自然災害に対するこれまでの対策・考え方に限界があることを認識せざるを得なくなっています。災害を含め自然環境に一方的に対抗するのではなく、自然と人間の相互関係を理解し、自然環境とより高い次元で調和した持続的な建築・都市の在り方を探っていきたいと考えています。

 建築構造・地震工学研究室 鬼丸貞友 教授

研究室紹介


▶紹介するのは…建築学部 建築学科 原 哲也研究室



原 哲也 教授
京都大学工学部建築学科卒業。
同大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、
竹中工務店設計部にて一級建築士として活躍。
作品に大阪木材仲買会館、ニフレル、エキスポシティ、
ピオレ姫路、琵琶湖ホテル、京阪京橋駅・京阪モールなど。

アーバンスケープを重視し、その場所にあるべき建築デザインを実現

建築とは文化、歴史、アート、社会情勢など広範な知見をベースに最先端の工学技術を活用し新しい空間体験を生み出そうとする行為です。私のゼミでは建築論をはじめさまざまなテキストを通して建築への理解を深め、また建築とアート・テクノロジーをテーマに制作課題に取り組み学生たちが建築へ独自のアプローチができるよう指導していきます。フィールドワークでは私の建築作品を中心に現地を訪れ、木と最先端工学技術の融合、水と光の空間演出を支える構造デザイン、景観から導き出された有機的フォルムなど、作品のコンセプトを実体験により理解し、また庭園や茶室から日本の伝統的感性を学び卒業設計に取り組みます。設計において私が重視するのは「アーバンスケープ=都市の様相」です。都市にはその場所が持つさまざまな特性があります。修士課程ではこの特性が生み出す都市の様相に着目し、例えば四天王寺を核とする信仰の場の歴史的特性の可視化、街の表層に着目した 神戶居留地の空間モデュールの継承といった、場所に固有の特性から新たなアーバンスケープを獲得していく事をめざしています。このように都市が生み出す様相について、多方面からの分析とそこでの新たな発見を建築として実体化していくことが研究のテーマです。


▶このゼミの卒業生



株式会社大建設計
広島事務所
設計室
西村大地
2019年度 総合政策学部 都市政策学科卒業
2021年度 総合政策研究科 博士課程前期課程修了

原先生の口癖である「大きくつくれ」をモットーに設計に向き合いたい

原哲也先生のゼミでは毎週のように課題が出されます。建築学科(当時、現・建築学部)の授業である設計演習と同時並行のため、「設計漬け」の毎日で技術も磨かれました。大学4年生の時に全国の大学生・大学院生が参加した設計コンペで入賞できたのも、設計漬けの日々のおかげだと思います。原先生はいつも「大きくつくれ」と口にされています。その真意を私なりに考えると、「建物が建つ周囲の環境や地域全体、あるいはその地の歴史や文化なども設計に取り入れる」というもの。
「メリケンパーク(神戸港)内にリゾート施設をつくる」という大学時代の最後の設計演習で、私は六甲山から港に至るまで周囲の環境や歴史などを考慮した設計案を提出し、最優秀賞を受賞。原先生から「その視野の広さを忘れずに設計に取り組みなさい」と言っていただきました。大学院を修了後に大建設計に就職、現在は公的施設の設計を担当する一方、一級建築士資格取得に向けた勉強にも励んでいます。今後も原先生の言葉を忘れず、設計に向き合っていこうと考えています。