工学部

工学部

 2021年4月 NEW 


●物質工学課程
物質科学からエネルギー問題を解決する

物質科学と呼ばれる従来の学科単位では十分に学ぶことのできない広大な学問領域を、「創エネ」「蓄エネ」「省エネ」の3つのエネルギー観点を切り口に捉え、新しい物質を創成するための基礎から実践までを、物理と化学の両面から分野横断的に学べます。企業や国立研究所出身者などの多彩な教員のもとで、最先端の研究を行うことができます。新しいエネルギー技術に必要な基礎知識と最先端技術を体系的に修得することで、物質科学からエネルギー問題を解決することのできる、自立した研究者・技術者への道が拓かれます。


●電気電子応用工学課程
電力を有効利用し持続可能な社会に貢献する

電気電子応用工学課程は、次世代モビリティーなどで使用される動力機器、情報通信機器、エネルギー輸送・変換機器など、我々の社会・生活で利用している機器の基盤となる「電気エネルギー」の有効利用分野において、世界最先端の研究開発をリードするとともに、この分野を支える次世代の人材を育成しています。これらのことを通して、あらゆる科学技術やイノベーションを用いて変革をもたらすグリーンイノベーションに取り組む、新しいエネルギー社会の構築に貢献しています。


●情報工学課程
AIや感性工学など多彩なITを学ぶ

情報工学課程では、情報通信の発展に貢献するため、コンピュータやネットワークの技術だけでなく、感性やエンターテインメントに関する教育と研究を展開しています。その学びは、基本となる計算機・ソフトウェアや通信の原理・仕組みの修得から、情報の本質とその可能性の探究まで広範です。例えば、コンピュータを用いたスポーツの戦略解析、最適化手法によるアニメの自然なCG作成など本課程の研究は新たな領域を切り拓いています。こうした分野横断的な研究活動を可能とする広角的でかつ創造性を備えた知力を育成します。


●知能・機械工学課程
人工知能と機械工学、未来をつくる技術を創出

知能・機械工学課程では、人工知能と機械工学の両方に必須となる数学的素養を学修し、それを土台として深層学習やベイズ学習といった機械学習や、画像情報処理・生体情報処理といった人工知能関連の専門知識、また、機械系力学や制御工学・ロボティクス・メカトロニクスなどの機械工学に関する専門知識を育みます。さらに、それらを進化させる研究能力や技術力、人工知能と機械工学を融合し高度化した知的ロボットやVRインテリジェンス・知的インタフェースなど、幅広い知識と深い思考力を身につけます。


●基本DATA
学生数 834名  募集人員 265名  専任教員数 46名
●取得可能な資格
[課程共通]・学校図書館司書教諭 ・国際バカロレア教員認定証(DP)
[物質工学課程/電気電子応用工学課程]・中学校教諭一種免許状 理科 ・高等学校教諭一種免許状 理科
[情報工学課程/知能・機械工学課程]・中学校教諭一種免許状 数学 ・高等学校教諭一種免許状 数学
[情報工学課程]・高等学校教諭一種免許状 情報

学生インタビュー



衛藤 舞さん
物質工学課程1年
兵庫・松蔭高校出身

■学部の学び
研究が実際の製品に採用。モノづくりのすごさを知る

私は大学で得意な数学や化学を勉強したいと思っていました。関西学院大学のオープンキャンパスに参加して田中裕久教授の模擬授業を受けた後に先生の研究室を訪問したところ、燃料電池で動くミニチュアの自動車が走っているのを見ました。さらにこの技術が自動車メーカーに採用されていることを知り、「モノづくりの研究ってすごい」と感じ、工学部物質工学課程を志望しました。私は中高一貫の女子校出身なので、共学でしかも男子比率が高い工学部に進学することには抵抗がありましたが、オープンキャンパスの時に出会った田中研究室の女性の大学院生が「心配はいらない」と背中を押してくださり、入学を決めるきっかけになりました。現在は高校で学んだ化学や数学の復習とそれを大学の学びや研究につなげる基礎的な授業や実験を中心に履修しています。

■もう一つの学び
「英語」を究めるために交換留学をめざす

幼い頃から英語に親しんできたことや私の家がニュージーランドからの留学生のホストファミリーになり、国際交流の楽しさを体験したことから、大学は英語系か理科系かで迷っていましたがいろいろと考えた末、「化学も数学も学べて、英語の論文の読み書きや海外学会への参加など英語を使う機会も多い工学部進学」という結論になりました。「英語も学びたい」という思いをかなえるために、アメリカかイギリスへの交換留学をめざして勉強に取り組んでいます。

主な研究紹介

 次世代型電池

 新しい蓄電デバイスの開発を可能にする物質や材料の研究

持続可能な社会を実現するためには、エネルギーを有効活用する技術が欠かせません。中でも余剰電力を蓄えておき、必要な時に必要なだけ使える、蓄電デバイスの開発は喫緊の課題です。本研究室では、世界最高性能の実験施設「SPring-8」と連携し、得られたデータをヒントに次世代型電池の開発に挑んでいます。これに成功すると、光さえあればスマートフォンがどこでも充電できるようになります。材料科学研究は豊かな未来の創造に生かせる学問です。

 ナノスケール構造物性研究室 藤原明比古 教授


 パワーエレクトロニクス

 機器の電磁干渉を防ぐEMC設計技術の確立をめざす

本研究室では、パワーエレクトロニクス分野におけるEMC(電磁両立性)設計技術を研究しています。パワーエレクトロニクスとは電圧・電流・周波数などの電気特性を少ない電力損失で変換するための技術の総称で、スマートフォンの充電や電気自動車をはじめ多様な用途に用いられており、現代の生活に欠かせない技術です。私たちは、機器から出るノイズを抑え、またノイズを受けても機器が正常に動作するように設計するEMC技術の確立をめざしています。

 環境電磁工学研究室 野村勝也 専任講師


 感性情報

 感覚的なことを解明し人の感性に響くものづくりをめざす

「おもしろい」「大人っぽい」「透明感がある」といった人間の感性を数値化し、その構造を解析するとともに、こうした感性情報を利用した商品開発や感性AIの技術開発などにも取り組み、実際に成果を上げています。プロジェクトの半分は企業との共同研究で、もう半分は国のプロジェクト。文部科学省のCOIプロジェクト「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」にも選ばれています。

 感性工学研究室 長田典子 教授


 サービス工学

 医療・介護分野の人手不足・過重労働を解決するロボット開発

サービス工学の考え方に基づき、ロボット技術を用いた人間支援技術の開発研究を行っています。少子高齢化社会で、特に支援技術が求められているのは医療・福祉分野や家事分野です。こうした社会のニーズに応え、人の生活内でサービス提供を実現するためのロボット開発および周辺技術開発を主な研究テーマとして、人の動作計測技術や人の動作モデリング、人との協調動作を可能とするロボット制御技術の開発などに取り組んでいます。

 サービスロボティクス研究室 中後大輔 教授

研究室紹介


▶紹介するのは…工学部 電気電子応用工学課程 大屋 正義研究室



大屋 正義 准教授
京都大学エネルギー科学研究科博士課程修了。
博士(エネルギー科学)。
民間企業で高温超電導ケーブル、
高温超電導マグネットの研究開発に従事。
現在は液体水素の冷熱を活用した
超省エネ超電導機器の開発に取り組む。

液体水素と超電導を掛け合わせた超省エネルギー発電システムを開発

海外の大規模な風力や太陽光発電システムでつくった電気をそのまま輸入することは技術的に困難なため、余剰電力で液体水素をつくってタンカーで輸入して貯蔵し、必要に応じて水素発電することが考えられています。しかし、液体水素をつくるにはマイナス253℃まで冷やす必要があり大きなコストが掛かります。一方、私が専門とする超電導コイルは電気抵抗をなくすために超低温に保持する必要があり、冷却装置の初期費用やその運転費用が多額になることが課題でした。そこで私は発電機のコイルを超電導化して液体水素によって冷やし、外からの侵入熱によって気化した水素を燃やし、発生した蒸気でガスタービンを回して発電するシステムの開発をはじめました。発電機を超電導化することで発電効率が向上するだけでなく、液体水素の冷熱を有効活用することで液化コストを回収し、将来の水素社会の構築に貢献します。この研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を受け、企業や他大学などと共同で進めており、ゼミの学生も実用化に向けた研究をしています。また、実際に液体水素を使った実験も宇宙航空研究開発機構(JAXA)と連携して実施。2050年カーボンニュートラルの達成に貢献できるのが当研究室の魅力であると考えています。


▶このゼミの卒業生



三菱重工業株式会社 総合研究所
パワーエレクトロニクス研究部
パワーエレクトロニクス第一研究室
淀 美香子
2019年度 理工学部 先進ナノエネルギー工学科※卒業
2021年度 理工学研究科 博士課程前期課程修了
※2021年4月より理系4学部開設。
この学部学科名はそれ以前のものです。

S i C 結晶の欠陥メカニズムの解明に挑み、国際学会での発表と論文掲載を実現

環境やエネルギー問題に興味があった私は、授業で半導体材料からエネルギー問題にアプローチできることを知り、パワー半導体の材料であるSiC(シリコンカーバイド)の結晶欠陥を研究する大谷昇先生の研究室に入りました。省エネルギーに貢献するSiC半導体ですが、SiC結晶に欠陥が多いため、価格が高くなりがちです。私はある結晶成長方法で欠陥が起きるメカニズムの解明に取り組み、その手がかりを発見。この成果によってフランスで行われた国際学会にポスター発表で招待されたほか、修士2年生の時に書いた論文(共著)が国際ジャーナルに掲載されました。現在は三菱重工業でSiC半導体を用いた製品の実用実験に携わっています。
大学で思うような研究結果が出なかった時、大谷先生から「もっと実験結果を観察すれば、どこに問題があって、次に何をすべきかが分かる」と言われたことを今も守っています。自動車や電車、空調機など多様な製品に使用されるSiC半導体が、より多くの製品に使われるように研究を進めたいと考えています。