2024.04.08

その研究はノーベル賞を超え地球環境を生活をより豊かにする

理工学部※ 化学科4年 小田垣柊人

※2021年4月より理系4学部開設。この学部学科名はそれ以前のものです。

物質の反応や仕組を学ぼうと理学部へ

私は高校時代にさまざまな化合物ができる有機化学に興味を持ちました。有機化学は医薬品やプラスチック、繊維など日常生活に欠かせないものを構成する物質について学ぶ領域です。ただ、高校の授業で学習するのは、反応の始状態と終状態など受験に必要な知識が中心で、その仕組みや「なぜそうなるのか」などについて学ぶ機会はほとんどありません。そこで私は有機化学における反応の機構や理論について詳しく知りたいと思い、関西学院大学理学部に入学しました。現在は倉橋拓也先生の研究室に所属し、地球環境に優しい物質を自分でデザインし、生活を豊かにすることをめざして研究を進めています。

先生は分かるまで説明してくださいます

大学に入って学んだ科目の中で印象に残っているのが、有機化学全般および物理化学と量子化学です。特に物理化学は難しいと感じました。私は分からないままでいるのは良くないと思い、自分で参考文献を探して疑問を解決したほか、授業後に自分が理解できるまで先生に質問しました。先生方も私の質問に対し、丁寧に説明してくださり理解することができました。物理化学と量子化学が分かると有機化学への理解も深まるので、積極的に学んでおいた方がよいと感じています。

過去のノーベル賞受賞研究を進化させる

私が取り組んでいる研究は、野依良治先生による「キラル触媒による不斉水素化反応の研究」(2001年)とデイヴィッド・マクミラン先生の「不斉有機触媒の開発」(2021年)の2つのノーベル化学賞受賞研究をベースにしています。野依先生は金属触媒、マクミラン先生は熱や光などによって活性化状態をつくり化学合成を行ってきましたが、私はプラズマで活性化をすることによって、毒性のある金属触媒を使わずに済むほか、光や熱の合成では不安定なためできなかった化学合成ができるのではないかと考えています。従来よりも人間の健康と環境にやさしく、そして社会のために役立つ、新しい化合物をつくる方法を生み出すことが私の研究の目標です。

新たなことを知るチャンス

新しいアプローチによる研究のため、実験装置を自作することからスタートしました。思っていたような結果が得られないことも多くありましたが、「初めて挑戦することだからうまくいかなくて当然。未知の問題を解決するチャンスを得た」と思うようにしました。何が問題になっているのか、それを解決するにはどうしたらよいかを自分で調べて考え、自分なりの答えを見つけた上で、先輩や先生に相談するようにしました。その結果、研究室に配属される前と比べて、考える力が飛躍的に伸びたと感じています。うまくいかないことや失敗が多いだけに、たとえ小さな成果であっても、よい結果が出た時の喜びはひとしおで、失敗と成功を繰り返しながら、研究を進めています。

世界を変えるような化合物をつくりたい

私がこの研究室に入ったのは、自分で化合物をつくって社会に貢献できると倉橋先生から聞いたことがきっかけです。研究室に配属された時、倉橋先生の指導で大リーグの大谷翔平選手も書いた目標設定シート、マンダラチャートを作成しました。この作成を通して「何を問われても、解決策などを他人に与えることができる豊富な知識を持った機転の利く人間になる」という自分の目標とそれを達成する手段を明らかにすることができました。入学当初は4年で大学を卒業するつもりでしたが、マンダラチャートで明確になった目標、研究の面白さから大学院への進学を決意。経済的負担を減らすため、学費減免の入試を受け、減免の対象者になることができました。今後もプラズマによる化合物開発手法の研究に励み、いつかは開発した手法で世界を変えるような化合物ができたら、と思っています。

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