What We Want Students to Learn

経済学部田中敦 教授【後編】

経済理論の根底に流れる「哲学と思想」

ボランティアで寄付交渉、その経験が大きな糧に

高校のとき、交換留学を支援する非営利組織「AFS」を通じてアメリカ留学したため、学生時代はAFSの支部でボランティアをしていました。寄付をお願いするため、関西の大手企業を訪ねては、どう伝えれば寄付してもらえるか、必死に考えて交渉しました。最初は手は震えるし声も裏返るしで、大変でしたけどね(笑)。この時の経験は私の糧となり、今のゼミづくりにも反映させています。卒業を控え、自分も大企業に入りたいと就活を考えていたところ、信頼する教授から勧められて大学院へ進学することにしました。ところがその教授は間もなく亡くなられ、代わりに拾ってくださった川口慎二先生との出会いが、私を研究の道へ歩ませることになったのです。

激動の時代、首尾一貫した「何か」を保つ大切さ

川口先生からは、経済理論の根本に流れる哲学や思想の大切さを教わりました。世の中が変わり、経済学も変わっていく中で、自身の研究も変化に対応させつつ、何か首尾一貫したものを持つことが大事だということです。はじめは懐疑的だった私も、『貨幣発行自由化論』を訳すお手伝いを通してハイエクの自由主義思想に触れ、『隷従への道』など他の著書を読みふけりました。思えば貨幣を発行する日銀を研究するようになったのも、貨幣の背後にある日銀の信認に関心が向いたのも、そのとき学んだこととつながっています。川口先生は、学生にさりげなく哲学・思想に触れる機会を与えるのが上手でした。成績ではなく面接での熱意で採用学生を決めるなど、学生の可能性を信じるゼミ手法も大いに参考にしています。

海外留学は“世界が変わる経験”を与えてくれる

最近の若い人に不満なのは、海外に行きたがらないことです。旅行は好きでも、留学や勤務先として海外を考えません。景気が悪いこともあって、留学で得られるだろう見えないプラス面よりも、就活のスタートが遅れるんじゃないかというマイナス面を気にするんですね。私たち大人の責任です。ちょっとした旅行とは違い、その国で生活し、日本人以外の人たちと学べる留学は、多様な価値観があることを教えてくれ、“世界が変わる”経験になります。視野が広がれば、人生はずっと豊かになります。学生には、短期でもいいから留学してほしい。そしてそういう経験を通して、日本にこだわらずに海外で活躍するということも考えてほしいと思っています。

みんなの「Smiles」につながる社会を求めて

私のモットーは「Smiles」。課題に直面したり選択を迫られたりしたとき、合理的に考えた上で最終的に出す結論が「自分さえ良ければいい」というものでなく、みんなの笑顔につながるものであるように。そんな思いを込めて複数形にしています。学生たちが社会に出て下す決断も、そうであればいいなと思います。卒業生たちとはフェイスブックでつながっています。関西や出張先の東京でも投稿で呼びかけると何人かが集まってくれるのがうれしいですね。消費者支援功労者表彰受賞の際は、投稿を見た学生たちが祝いの席を設けてくれました。一緒に飲んでいると、みな自分なりに考えて社会で頑張っている様子が伝わってきて、頼もしく感じています。