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「日銀は破綻しないのか」政策検証で追究
経済学部田中敦 教授【前編】
中央銀「信認」への疑念が生んだライフワーク
主に金融政策をテーマに、日本銀行が実施した政策がどのようなメカニズムで経済全体に波及していくのか、どんなときにメカニズムが働かないのかを、実際のデータを使って研究しています。日銀は1990年代の終わり頃から、ゼロ金利や量的緩和、“異次元緩和”と、過去に例のない金融政策を取り始めました。その有効性を検証するうちに、そもそも日銀は信認できるのかという疑問が生じ、以来、「日銀の破綻の可能性」という、日本ではあまり研究されていないテーマを追究するようになりました。中央銀行の破綻は、主に発展途上国で現実に起きています。日銀は大丈夫と言うなら、その根拠は何か、研究者として明らかにしたいと考えています。金融の最前線で「東京合宿」、現実を体感する
ゼミでは日銀に限らず金融全般を扱うため、学生の取り組むテーマは資産形成や今はやりのフィンテック(ITを活用した金融サービス)など様々です。ゼミは3年になるまでの半年間は、文章のフローチャートやアウトラインを作らせるなど、説得力のあるリポートや論文を書く訓練に充てます。論理的な思考の組み立て方や、筋道立てて説明できる技術は、社会に出てから大事な力になります。理論を学ぶからこそ現実をしっかり見てほしいとの思いから、毎年9月には、日銀本店や民間銀行のリーディングルーム、東京証券取引所などを訪問する東京合宿も行います。大手銀行で働くベテラン行員ら社会の最前線で働く方から話を聞く機会を多く設けています。消費者の「苦情」が企業の「アイデア」を生む
神戸市の依頼・協力を得て、2013年から経済学部の授業として消費者教育を行っています。オムニバス形式で、消費者の立場だけでなく、企業側の話も入れているのが特徴です。消費者問題というと、「悪徳業者から消費者をどう守るか」と見られがちです。でも、良質な業者でもトラブルを起こすことはあり、意図せず起こってしまう被害もあります。企業側からはそうした話に加えて、かつては減らす対象だった「苦情」を、今では新商品・サービスに生かす「アイデア」と捉え直す動きが増えていることなども紹介してもらい、社会に出て行く学生に役立つ授業ができていると自負しています。昨年5月には消費者支援功労者として内閣府特命担当大臣表彰を受けました。圧迫面接にも決して負けない判断力、ゼミで培う
銀行や証券会社に限らず、どんな企業でも金融は常に関わってきます。現実の金融に興味がある人にとって、有意義な学びの場になると思います。最近うれしかったのは、就活で圧迫面接を受けたという女子学生が、「ゼミでの先生の突っ込みに比べたら大したことなかった」と話してくれたことです。意識的に無理な質問をする圧迫面接は、注意して聞けば、論理構造上無理があることに気付けます。緊張する場面で彼女が冷静な判断力を失わなかったことから、そのための力をゼミで育むことができたことを、心強く感じました。ビジネスでも子育てでもどんな場面でも、みなさんが自分の考えをしっかり持って活躍できるよう、力になりたいと思っています。