What We Want Students to Learn

理学部山口宏 教授【後編】

研究の醍醐味に心躍らせよう

理科が大好きな子ども時代。そのまま大人に

 いつから研究者になろうと思っていたのかと、聞かれることがありますが、私の場合は、子どものときからすでに理科が大好きで、「三つ子の魂百まで」といった感じでした。虫取りにはじまり、ストーブの中に思いつくものを何でも入れて燃やしてみたり、実験と観察の芽生えがそこにありました。あとは、理科の実験の本を真似て、お酢の中に電気を通して泡銅メッキをしたり、貝殻をお酢につけて溶かしたり。面白かったのは、梅干しのカメの中にできた大きな塩の結晶にマジックを塗り、それを水に入れて中の塩を溶かし、マジックの黒い膜の立方体ができたことです。それをワクワクしながら観察していました。そのころから、自分で工夫しながら納得するまで実験することが好きだったようです。

学生も自立した研究者であって欲しい

 自分で工夫することが好きだったこともあり、私の研究室では、学生たちに「自分で考えて、自分でやりなさい」と、ある意味放任主義で行っています。自分で問題点を見いだして、自分で解決しようとする姿勢を身につけて欲しいですね。そして、分からないことや、こういう実験がしたいといったことを言ってきてくれたら、いくらでも力になります。研究室では、共同研究が多く、他の研究所や他大学の研究室に学生を派遣することもあります。そうしたときに、学生であっても関西学院大学の一研究者として出向いているという自覚を持って欲しいのです。自分が何をやっているのかを理解し、分からないことはどんどん聞いて、しっかりと自分のものにしていくという積極性を持って研究に取り組んで欲しいと思っています。

研究者にとって素晴らしい環境で、サイエンスのロマンを

 関西学院大学は、研究者にとってとてもいい研究環境が整っています。設備の充実はもちろんですが、コツコツと気の長い研究をやっていても、成果を急がせないありがたい環境です。そうした環境の中で、どっぷりと構造研究に取り組んでいる最中、タンパク質のカタチが決まって、この分子がどのように働いているかが分かってくると、生体分子って本当にうまく働いているな、人間は生かされているのだな、といった深遠な気持ちになってきます。効率よく無駄なしに働く生体分子に、生き物のロマンを感じ、サイエンスの神髄を感じます。人間が数百年かけて見つけたような化学反応を、体の中では、太古の時代からやっていると考えると、なんだか心が躍ります。

多様な場で活躍する頼もしい卒業生たち

 私の研究室から巣立った学生の進路は多彩です。学部生では、製薬会社のMR(医薬情報担当者)はもちろんですが、銀行や商社といったところでも多くの卒業生が仕事に就いています。理系企業への融資や、化学原料の買い付けなどで活躍の場がたくさんあるようです。化学が分かるということは、さまざまな場で大きな強みになります。修士の学生は、研究開発職として化学会社や食品会社、化粧品会社などへ数多く就職しています。また、東北大学の助教になった学生や、実験でいつもお世話になっている東海村のJ-PARCの研究員になった学生もいます。研究を通して、失敗も経験し、その失敗をしっかりと分析して、成長した卒業生の姿がそこにあります。みんな、頼もしい教え子たちです。