What We Want Students to Learn

神学部加納和寛 准教授【前編】

キリスト教の視点で現代社会を読み解く

変化していく信仰の概念、知的に追求

 キリスト教神学とは、信仰という「体験」や「感動」を、可能な限り知的に追求しようとする試みです。今も昔も変わらない信仰それ自体も、その説明や表現の形は、時代に合わせて変化しています。現代の私たちが漠然と持っているキリスト教のイメージのかなりの部分は、おおよそ19~20世紀に出来上がりました。特に当時のドイツは産業革命と科学技術の発達、社会主義思想の広まりの中で、宗教に批判的な人々が現れ始めていました。神学者は全く新しい形でキリスト教の価値を説かなければならなくなり、それが今に通じるキリスト教のあり方につながっているのです。当時の神学者たちの葛藤や思想、表現に学び、今に生かす方策を研究するのが私の専門分野です。

哲学的研究で導く神学の「組織」分野

 神学には、聖書、歴史、実践、組織という四つの分野があり、私が教えているのは、そのうち組織です。哲学的にキリスト教の信仰内容を考えるというもので、教理を学問的に研究する学生もいれば、家族観や結婚観、性の多様性をキリスト教の視点から読み解こうとする学生もいます。ちなみにクリスチャンの比率は3分の1くらいです。授業の中ではグループ討議の時間を設けて学生同士に話をさせたり、私と話したりする時間を意識的にとっています。また、授業に早めに行き、終わってからもしばらく残って学生と話す時間を持つようにも心がけています。少人数のゼミということもあって、一人一人の学生に向き合うことを大切にしています。

多角的な「神学の方法論」 生き方の糧に

 抽象的存在を研究対象とする神学には、はじめから唯一の正解があるとは限りません。では何でもいいかというとそうではなく、他の人に説得力のある形でないといけませんし、理由も学問的にきちんと構築しなければなりません。私たち一人一人の人生にも、同じことが言えると思います。どんな仕事に就くか、どんな家族をつくるか、何を大切にして自分の人生を生きるか。自分で納得できる選択でなければ後悔しますし、家族や友人の理解を得られなければ孤独な人生になってしまいます。また、そうした生き方は恐らく長く続かないでしょう。多角的な視点で物事を見て、試行錯誤を繰り返す神学の方法論は、人生を考える上で、重なる部分が多いと考えます。

人生の選択時、指標となる最初のステップ

 現代は、「理由など考えなくてもそれが当たり前」ということはどんどん少なくなっています。例えば、「家事は女がするもの」だなんて、今では通用しません。今を生きる私たちは、人生観や価値観、世界観について、自分で考えて納得し、選択しなければなりません。ただ、何もないところから考えるのは大変です。そんな時、キリスト教の視点を持つことが、若い人たちにとって有益なのではないでしょうか。キリスト教は2000年の歴史を持ち、今も20億人余りが信仰する「21世紀の生ける宗教」です。信仰するしないは自由です。自分の人生を歩む最初のステップとして、キリスト教という「もう一つの視点」を持ってみてほしいと思います。

※後編は2020年2月25日に公開予定です。