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人工光合成が開く、サステナブル社会の扉

生命環境学部橋本秀樹 教授【前編】

実はよく分かっていなかった光合成の仕組み

 主に植物や植物プランクトンが光のエネルギーを用いて二酸化炭素と水から炭水化物を合成する光合成。私はこの光合成のメカニズムを解明し、人工的に光合成を行うことができる新しいエネルギーシステムの研究に取り組んでいます。光合成というと小学校の理科で学ぶものですから、「今さら何を解明するのか」と思う人がいるかもしれません。光合成とは光エネルギーから生体エネルギーをつくりだす反応ですが、どうやって光をつかまえているのかなど、詳しいメカニズムが分かっていません。その証拠に、人間が光合成を再現しようとしても、なかなかうまく行きません。光合成を人の手で再現する「人工光合成」を実現するためには、まず光合成の仕組みを知らなければならないのです。

世界的な電力需要の高まりにどんな対処ができるのか

 次に人工光合成と電力の関係を見てみましょう。世界中の人々が何の心配もなく電気を使うようになるには、どのくらいの電力が必要でしょうか。諸説あるものの、人類が使う総エネルギーのうち、12テラワットの発電ができれば電力問題は解決すると考えられています。発電した電気をそのまま貯めておくことはできません。こう言うと、「蓄電池があるじゃないか」という指摘がありますが、蓄電池は電気エネルギーを化学反応によって形を変えておくものです。12テラワット分を蓄電池で貯めておこうとすると、今の地球に存在するとされるレアメタルをすべて使っても間に合いません。また、そもそも12テラワット分という膨大な量を発電するにはどうしたらよいのでしょう。

人工光合成が世界のエネルギー問題を解決する

 電気は必要なときに必要な分だけ使えるようにしておくことが求められます。使う人が集中する時間帯に供給が不足するという事態が起きないようにしなければなりません。現代社会では、そのために石炭や天然ガスなどの化石燃料を用いる発電をメインにして電力をまかなっています。化石燃料とは、光合成を行っていた植物の化石で30億年という時間をかけて作られたもの、つまり光合成によって作られた生体エネルギーが長時間をかけて化石燃料という形に変わったものです。皆さんもご存じのように化石燃料の埋蔵量は限られています。そう考えると人工光合成とは、化石燃料に変わる生体エネルギーを得られる仕組みであり、エネルギー問題の解決に大きく寄与するものと言えるでしょう。

応用化学の修得に始まり、国内外の学会で研究成果を発表

 私のゼミを志望する学生は、学部入学時から人工光合成技術の確立に向けて必要な応用化学の知識の修得を図ります。化学、生物(生化学)、物理、エンジニアリングを学習し、4年生で研究室配属されてからの研究に必要な知識を身につけます。これらを学ぶ中で私がその人の特性や得意・不得意を考慮し、研究テーマを設定します。週1回のゼミの時間では、光合成を理解するために必要な量子光学の論文・専門書を読むほか、物性物理の学修も進めます。私が選定した雑誌掲載論文の中から、学生が好きなものを選んでその内容をまとめ、自分自身の研究成果と絡めて説明してもらいます。現在のところ、ゼミ生の約半分は大学院に進学しており、4年生の1年間と大学院修士の計3年の間に国内外の学会で成果を発表します。

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