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脳が無意識に処理するメカニズムの解明を目指す

文学部小川洋和 教授【後編】

脳が無意識に処理するメカニズムの解明を目指す

 八木研究室に入って卒業論文研究として取り組んだのは脳波を使った研究でした。当時はまだそれほど普及していなかったヘッドマウンドディスプレイを使い、ヴァーチャルリアリティ環境内で目を動かしているときに、どのような視覚処理が行われているのかを脳波を測定して検討しました。大学院に入ってからは、ヒトが外界の情報をどのように選択して処理しているのかという問題について興味をもち、注意の問題に取り組むようになりました。眼球運動や注意によってどのような情報が優先的に選択されるのかは、ほとんど無意識に決定されていますが、その心的なメカニズムについては不明な点が多く、非常に興味深い研究テーマだと感じています。

脳の「手抜き」の仕組みを解明し、社会に役立てる

 私たちの脳は目の前にある情報のうちごく一部を選択して処理しているので、当然その時に選択されない、つまり「見落とされる」情報がでてきます。これを脳の「手抜き」と表現することもできることもできるかもしれませんが、これは生物的な器官である脳の性質を考えれば致し方ないことです。この「見落とし」は日常的に起こっていることですが、私たちはほとんど気づくことはなく日常生活を送っています。しかし、時にこれが自動車事故などの重大な事故の原因となることがあります。脳が「何を選び」「何を選ばないのか」その仕組みを明らかにすることで、自動車の自動運転など様々な技術開発に生かすことができるかもしれません。

アカデミックな貢献ができる卒業論文を

 私の研究室には、心理学の実験や、視覚・聴覚に興味のある学生が入ってきます。私の方針は好きなテーマで研究をしてもらうこと。ただし、研究室に入った時点では漠然とした興味であることが多いので、関連する先行研究論文を読んでゼミの中で発表してもらい、ゼミ生みんなで議論をします。そのような活動を通して、「これまで他の人がやっていない」テーマを見つけてもらい、実験等を行うように指導をしています。学生のみなさんがやりたいと思うことを高いレベルでサポートするのが教員である私の役割です。だから学部生の卒業論文であっても、アカデミックな意味で心理学の発展に貢献できるレベル、心理学の学会で発表できるレベルを目指しています。

充実した研究環境の中で心理学を学ぼう

 心理学といえば教育心理学や臨床心理学など応用心理学をイメージする人が多いと思います。私も高校生の頃は犯罪心理学に興味を持っていました。しかし、今私が研究している認知心理学は「基礎心理学」に属します。基礎心理学は人間の行動、心のクセ・動きなどについて、実験を通して明らかにしていきます。人間は意外に自分自身のことを分かっていませんが、基礎心理学を学ぶと人間のことがよく分かります。それが基礎心理学の魅力です。関西学院大学心理学科は私立大学で最も歴史がある学科の一つで、研究実績が豊富にあります。また、充実した設備があり、基礎心理学・応用心理学で活躍する多くの先生方が在籍しています。心理学に興味がある人はぜひ私たちと一緒に研究しましょう。

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