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中小企業の未来「日仏の政策比較」で探る
商学部山口隆之 教授【前編】
「強み・弱み」を分析 潜在力を引き出す
日本企業の名前を幾つか挙げてと聞かれたら、誰もが知る大手の名を答える人が多いでしょう。でも、日本の企業は実は99.7%が中小企業。そしてその80%以上が、従業員20人以下の製造業や、商店街にある5人ぐらいでやっている小さなお店なんです。働く人の7割を占める圧倒的多数派なのに、小さいから後継者がいない、優秀な人材が集まらないといった問題を抱えています。そんな中小企業の強み、弱みを把握し、どうすれば潜在力を引き出せるかを考えるのが私の研究テーマです。特にフランスの中小企業や政策を日本のそれと比較しながら、より良い政策とは何か、どうすれば地域を活性化できるかといった事を考えています。ゼミの研究テーマは学生自身が“調理”
ゼミでは学生をグループに分け、それぞれにテーマを与えて調査・発表・討論させます。テーマは「地方創生と中小企業」「女性雇用と中小企業」など大まかなもので、どう調理するかは学生次第です。私がするのはサポートで、基本的に、学生自身が楽しみながら取り組み、その中で「なぜ勉強しないといけないのか」ということを自分たちで感じとって欲しいと思っています。夏休みには中小企業を訪ね、教科書にあるような課題に現場はどう向き合い、どんな工夫をしているのかを聞き取るフィールドワークも行います。「遊びも勉強も手を抜くな」というのがゼミのモットーで、討論も活発です。ほぼ全員で卒業旅行に行くなど、非常に仲がいいのも特長です。日本の社会問題解決へ カギ握る「中小」
たとえば、過疎化が進む地方に5000人が働ける大企業の工場を一つ建てても、活性化を期待できるとは限りません。大企業に勤める人は時間をかけて通勤するのが当たり前で、必ずしも近隣に住むわけではないし、そこで生み出された利益は企業の戦略に応じて他の地域に投下される可能性もあります。でも、従業員5人の企業が1000社あれば、そこで働くのはみんな近所の人であって、取引相手も近くにいることが多いから地域の中でお金や人材を回していくことができます。また、高齢者の雇用比率が高いという中小企業の特徴を生かせば、今後人口減少で労働力が不足するという問題も解決できるかも知れません。このほかにも、女性の社会進出、子育て支援の必要性、東京一極集中といった日本が抱えている社会問題や、地球環境問題といった人類が抱える大きな問題も中小企業を糸口として解決できる可能性があります。中小の「弱み」を「強み」に変える政策が、より良い社会づくりにつながると考えています。「起業チャレンジ」の学生 もっと出て欲しい
学生の皆さんには、先入観にとらわれず、広い視野で物事を見てほしい。就活を例に取れば、大企業優先の学生が多い中で、中小企業政策に携わる公的機関を志望するゼミ生がコンスタントに増えてきていることを心強く感じています。さらに「起業」を選択肢の一つに入れる人が増えてくれる事を期待しています。毎年英米の大学が70か国程度を対象に、国民の中に「起業したい」と考える人、あるいは起業して間もない人がどれぐらいいるかを調査しているのですが、日本はいつもほぼ最下位です。実際多くの関学生も「働く=大企業で働く」という意識を持っている人がまだ多いように感じます。でも、新たな中小企業が生まれなければ経済の新陳代謝は起こらないし、新しい物も生まれてきません。「企業は創るもの」という意識を持って、そういうところでチャレンジする学生がもっと増えて欲しいですね。