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歴史や文化を基礎に新しい生活空間を創造する
建築学部山根周 准教授【前編】
アジアの建築・住居・都市を研究
私は長年、インドやパキスタンなどで歴史的な建築・住居・都市の研究を継続してきました。近年はフィールドをマレーシアなどの東南アジアや、中国にも広げています。建築や都市の空間には、その国・地域の歴史や文化、技術などが大きく影響しています。インド国境に近いパキスタン北部のラホールは、ラホール城塞などの美しい歴史的建造物と密集した市街地で知られています。他所から来た人は市街地に足を踏み入れると迷ってしまうほどですが、現地の人は位置関係をしっかり把握しています。これは敵から居住区を守るためであると同時に、プライバシーを重視し、女性を外部の人の目にさらさないというイスラム圏の習慣からきたものです。イスラム圏には、こうした都市が幾つも見られます。異なる文化を持つ人々が共生できるまちづくり
グローバル化が急速に進む現在、さまざまな国や地域の人たちが日本に住むようになりました。外国人を数多く受け入れている地域には、「リトル・インディア」、「リトル・ブラジル」などと呼ばれる、特定の国・民族の人々が住む地区も増えています。関西学院大学に近い神戸市には、古くから中国人やインド人のコミュニティがあるなど、歴史ある外国人コミュニティも少なくありません。多民族化しつつある日本ですが、今後も増えていく外国人と日本人がいかに共生していくかが課題です。「アジアの歴史的建築・都市の研究」の中に、そのヒントが見つかるのではないかと思っています。異なる文化・習慣、宗教の人たちが衝突することなく、生活できる空間づくりに貢献できればと思います。アジアでのフィールドワークを体験
ゼミの学生には、「地域生活空間計画に関するものであれば、研究テーマは自由」と指導しています。3年次にはまず自分が何に関心を持っているか、何を研究したいかを明確にしてもらいます。そのために文献や関連する論文を読むことから始めます。また、関西学院大学の神戸三田キャンパスで開かれるリサーチ・フェアで必ず発表をしてもらいます。今後取り組む研究テーマの明確化を図り、進級論文を執筆します。並行して、希望するゼミ生は、私が実施するインドやマレーシア、中国などの現地調査に同行し、研究の基礎であるフィールドワークを体験します。研究に欠かせない「フィールド(現場)から考える」姿勢を身につけることを目的にしています。現場の体験を重視した教育活動を実施
2019年から京都大学、神戸大学など関西で建築・都市を学ぶ学生が参加するワークショップに参加。「都市と駅」をテーマとし、各大学が個別課題を決め、調査・分析・提案を行いました。学生たちは他大学の発表や議論に触れることで、新たな気づきや刺激を得ているようです。また、神戸市の古民家再生プロジェクトにも取り組み、古民家の空間的特徴に基づいた改修計画を提案し、施工作業にも参加しました。4年次には各自の研究に取り組みます。文献や現地調査に基づき卒業論文にまとめる、あるいは卒業設計という形で建築・都市の提案をする、いずれの方法でも構いません。ゼミの時間以外にも、ゼミ生とまち歩きをしたり、ゼミ合宿で各地の建築やまちを観察したりするなど、現場の体験を重視した活動をしています。