What We Want Students to Learn

教育学部藤井恭子 教授【後編】

子どものサインを見逃さないために

教師になるのが夢・・・そして教員養成の道へ

 小学4年生の頃から教師になるのが夢でした。人を支え、育てる仕事をしたいと思っていたので、大学では中学と高校の教員免許を取りました。一方で、人の心というもの、とくに思春期青年期の心理に特に興味がありました。ちょうどその頃、スクールカウンセラーという仕組みが新たにできました。心理学と教育の狭間で生きていくことはできないか――。大学院では青年心理学を専攻しましたが、一方で臨床心理学や学校心理学の領域についても勉強を重ね、資格を取りました。研究を深めていく中で教員養成の重要性に気付き、今に至っています。教育って本当に魔力があります。恐ろしくて、しんどくて、でも離れられません。生まれ変わったら別の道をと思うけれど、やっぱり、教育の道を選んでしまうでしょうね(笑)。

研究には“家庭内ディスカッション”が欠かせません

 教育学部というと、教育学を学ぶ場所だと思われがちです。でも、教員養成には心理学に関する授業が非常に多いんです。中でも学校臨床、学校心理学の領域は、教師が身につけなければならない非常に大切な知見です。子どものサインをどこで見ていくのか、どんなふうに集団のゆがみが出てくるのか。目の前の学生たちがやがて教育現場で子どもたちの人生に関わっていくのだという責任感・使命感を持ちながら教えています。研究を続ける上で、私が一番影響を受けているのは相方(夫)です。私が人間を内面の心理特性から捉えようとするのに対し、民俗学の研究者の夫は、歴史や文化の中で人を捉えるという視点を与えてくれます。彼は、心理学の論理構成を面白がってくれることもあって、よく家庭内研究会をやっています(笑)。

私を癒やしてくれる甲山森林公園の緑

 関学の学生たちは、人とつながることへの屈託なさがありますね。私のゼミも結構言いたいことを言い合える雰囲気で、飲み会やバーベキュー、旅行などを一緒に楽しんでいます。実はゼミには飲み会の企画係がいて(笑)。3・4年合同飲み会がしょっちゅうあります。卒業生が乱入することもしばしばです。うれしいことがあった時も悩んだ時も訪ねてきてくれる卒業生たちの存在は、私にとってもすごく大きな励みになっています。ただ、人の心ばかりを見ていると、時々やはり疲れてしまいます。そんなときは甲山森林公園を歩いて、大学まで来ています。緑の中を歩いていると、自然の中で生きる人間の活力が思い起こされて、いい気分転換になります。

旅は「歴史の中にいる自分」を気づかせてくれる

 自分とは何かを考えるとき、私はいつも旅に出ます。学生の頃はよく沖縄に行きました。日本人といっても多様な文化がある、私たちが日本人だと思っているのは、大和朝廷を中心としたアイデンティティーなんだということに気づかされたものです。今はヨーロッパ、特にオーストリア旅行が好きです。ハプスブルク家が600年以上統治したこの国は、多様な文化の融合によって、ジレンマを乗り越えて紡いできた歴史であるといえるでしょう。ウィーン学派には、フロイトやユングなどの著名な心理臨床家もいます。心理学で「今この時点」を見ることの多い私にとって、旅は歴史の中に自分を位置づけるという大事な視点を持たせてくれます。学生にも、どんどん旅行や留学を経験し、異文化と照らし合わせて自分を問い直してほしいと思っています。