What We Want Students to Learn

建築学部山根周 准教授 (2021年4月より建築学部就任予定)【後編】

真に「持続可能な建築・都市」とは何か

建築家・高松伸氏の作品に衝撃を受け、建築を学ぼうと決意

 私の父は大学で水産学を研究していました。子どものころによく、古い大学の校舎で魚のエサやりや水槽の清掃などを手伝わされ、遊び盛りだった私は、大学の先生には絶対なりたくないと思っていました。そんな私が学びたかったのは航空工学や宇宙工学。親戚にパイロットがいて、航空関係に憧れを持っていたからだと思います。しかし、進みたかった航空工学の学科は難易度が高く、「将来、自分はどの道に進もうか」と悩んでいました。そんなとき、ある番組で建築家、高松伸氏のことを知りました。京都で伝統を意識しながら斬新な建築を設計していて、その姿と作品に魅せられました。「建築は面白そうだ」と思い、建築学科に進学することにしました。

建築家への道から建築・都市の研究者に転身

 「人の心を打つ建築家になろう」と思って大学に入りましたが、設計のうまい学生の作品を見ては、建築家への道は壁が高いことを実感します。それでも大学院修士課程の修了後、ある建築家の事務所に就職が決まっていたのですが、指導教授から「博士課程に進んでみないか」と言われ、迷ったあげく、教授の誘いを受けることにしました。分野は違うものの、かつてはなりたくなかった研究者の道を歩みだしたのです。教授の専門はアジアの歴史的建築や都市の研究で、私はパキスタンの仏教遺跡の現地調査に参加。パキスタンの別の都市やエジプトなども訪れ、日本とは異なる建築や都市の姿にカルチャーショックを受け、博士課程ではインド・パキスタン地域の住居や都市空間の研究に取り組むことになりました。

現地調査、生活の中で人びとの現実を見つめる

 インドやパキスタンでの調査は、1カ月ぐらいかかります。毎日3食がカレーで、飽きることもあります。トイレも日本とはまったく違います。また、調査用のボードを持ち、カメラを提げて街を歩く姿は、現地の人から見れば不審者。住民に警戒され、英語ができない現地の人から文句を言われたり、若者から追い掛け回されたりもしました、また、インドでは物乞いの子どもの一人にお金を与えると、他の子どもたちが一斉に集まってきてしまうような体験もしましたが、現地の生活や経済的状況を目の当たりにして多くのことを学びました。特に住まいやまちを見る上で居住者の社会や現実の状況を考えるようになったのは、これらの体験のおかげだと思います。

歴史や文化、伝統を基礎とした新たな生活空間を創造すべき

 2001年のインド西部地震の際には、小さな村の復興活動にも取り組みました。現地の歴史的建造物と伝統的住居の被害状況を調査。同時に長期的視野でどう復興するのかを考えました。被災した歴史的建造物を壊し、新しい建物を建てるのは簡単ですが、長年住民の生活を支えてきた住環境は激変してしまいます。そこで歴史的・伝統的空間を維持継承しながら、建物の耐震性も考慮した復興計画を立案しました。現在、アジア各地では、機能性・効率性・経済性を追求した大規模な都市開発が進んでいますが、今までと住環境が激変したまちは今後も長期に人が住み続ける持続可能な都市となるのでしょうか。歴史や文化、伝統を基礎とした新しい生活空間の創造が必要なのだと感じています。