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関西学院大学で建築を学ぶとは
建築学部八木康夫 教授【後編】
ヴォーリズ様式のキャンパスで建築を学ぶ意味
関西学院大学の西宮上ケ原キャンパスは、W.M.ヴォーリズがキリスト教思想の元に設計したものですが、建築学部のある神戸三田キャンパスもヴォーリズ建築の様式を受け継いだスパニッシュ・ミッション・スタイルの建物となっています。建築を志す皆さんが、落ち着きがあり、統一感がある、ヴォーリズ・スピリットあふれる建物・空間で、「建築とは何か」「空間とは何か」を探究することに、大きな意味があると私は感じています。建築学部では社会の要望に応える力を身につけることを重視しています。また、1年生の春学期から「表現演習」という科目を履修します。写真撮影やデッサンなどを通して表現を学ぶもので、表現することの楽しさを早い時期から体験してもらいたいと考えています。実践に近い教育を通して「建築」を考える
関西学院大学の建築学部としても、私の研究室としても、学生に実際にアウトプットをする機会を設けています。例えば兵庫県尼崎市武庫之荘のアパート改修、竹田城址がある兵庫県朝来市の古い町並みの空き家活用に加え、国内外の設計コンペ(設計を競う競技会)などへの参加、都市デザインの提案など、数多くの設計を体験することができます。建築においては、構造デザイン、環境設計も重要な仕事です。電気や水道、熱をどう扱うのかなど、建物や空間におけるさまざまな分野を「建築」という言葉で束ね、どういう「カタチ」になれば人々が住みやすいのか、快適と感じるのか。リアルな業務に近い教育を通して、学生の皆さんに理解してもらえるようにしています。
※左図 設計作品(住宅案)
よい建物は「おいしいもの」に似ている
「かっこいい建築」と言った場合、コンクリート打ちっぱなしの建物を思い浮かべる人がいるとします。しかし、その感覚はその人が持っているもので、他の人は違うかもしれません。また、見た目がよくても使いにくいものだったら、あるいは建物が周囲の環境を乱すものであったら、よい建築とは言えないでしょう。建築や街づくりは「おいしいものをつくる」ことに似ています。「おいしいもの」を嫌いな人はまずいません。単に建物をつくるだけでなく、「どうしたら人が楽しめるか」「住むことが楽しいと感じてもらうにはどうしたらよいか」。それを実現するためには、確固たる工学の技術とアート感覚が欠かせません。それらを身につける教育をすることが私たちの役割だと考えています。
建築家として自らの考えを言葉にする力を養う
私の研究室で重視するのは、説明する力の育成です。作品を作った際には、「なぜこういうカタチにしたのか」を説明することを求めています。前述したように建築家は「依頼主のお金」で建物や街並みをつくることになります。建築には計算式のように答えが一つではありませんから、「なぜこのカタチにしたのか」を、自分の言葉で正しく説明する責任があるのです。私の夢の一つは、関西学院大学の中に建物のデザインや街づくりなど、ライフスタイルに関わるデザインを創造する会社をつくることです。そしてその会社で本学の学生や卒業生が活躍して欲しいと思っています。さらにその中から本学で後輩たちを教える「プロフェッサーアーキテクト(教授で建築家)」が生まれてくれたらと思っています。