Research 研究

オフィス環境醸成が「働き方の未来」を握る

総合政策学部古川靖洋 教授【前編】

未開拓だった「ホワイトカラーの生産性」

 オフィスの生産性、オフィス環境とそこで働く人々のモチベーションの関係について主に研究しています。具体的には、オフィスワーカーへのアンケート調査を基にデータを集め、統計分析を行って因果関係を調べています。もともと大学の経営学は、工場の生産性を上げるためにどうマネジメントするかという研究が主流で、ホワイトカラーの生産性を対象としたものは、私が研究を始めた約30年前には、ほとんど手つかずの分野でした。何をもって生産性を測るかという難しさはあるものの、興味深く、必要な研究だと考えています。ここ10年ほどは、情報通信技術(ICT)を活用し、場所や時間にとらわれずに柔軟に働く「テレワーク」について産官学で研究しています。

韓国でプレゼン合宿、経営課題の解決策探る

 ゼミは3、4年合同で、広く経営学をテーマにしています。3年の間は5人ほどのグループ単位で実証的な研究活動、発表を行い、4年も加わって活発に議論します。学外でも、毎年11月に研究発表大会や、神戸新聞社が運営主体であるMラボ(阪神間の中小企業の経営課題について、大学生が解決策を提案する)に参加し、研究発表をしています。本学部の他の経営学ゼミ、慶應大商学部などと韓国で実施するプレゼンテーション合宿も恒例行事です。韓国の学生を交えて即席チームを作り、実質4日間でテーマに沿って発表し、学生はプレッシャーがある中で、言葉や文化の壁を乗り越えて成果を出さなければなりません。学生を成長させる、得難い体験だと思っています。

テレワーク導入の起点となるデータ解析に全力

 私が研究しているテレワークは、政府が「働き方改革」につながるということで推奨しています。しかし、「部下の顔が見えないと、仕事をしているのかどうか不安」「直接管理ができず、評価が難しい」などの理由から、多くの企業は乗り気でないのが実情です。だからこそ、テレワーク実施企業と未実施の企業とを比較し、漠然とした不安、あるいはメリットなどに関する認識の差を明らかにすることに意義があると考えます。実施後、企業の不安は減ったのか、従業員のストレス度やモチベーションは変化しているのか。アンケート調査・解析で、企業が導入の是非を検討する際に参考となるようなデータを集め、考察しています。同時に、オフィス部門やホワイトカラーの生産性向上をどう測るかの研究も進めているところです。

実社会の事象を多角的に学ぶ総合政策学部

 総合政策学部で経営を学ぶメリットは、多様な見地から経営事象を考察できるということです。例えば、テレワークは、地方創生のかけ声の下、幾つかの地方自治体がインフラの整備を行ったものの、企業や起業家を呼んで定着させることに成功したところは、ほんのわずかです。成功している徳島県神山町の場合、NPOと協力し、どういう企業に来てもらうか、移住してきた人のコミュニティーの場としてどんな店のバラエティーをそろえるかなどを多角的に検討しています。経営学の視点だけでは、そうした全体像が見えてきません。総合政策学部には、行政や法律学、財政学、地方再生など、様々な分野の専門家がいます。実社会に近い形でいろいろ考えられるというのがメリットだと思います。

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