Programs at Each Schools 学部プログラム

2020.06.02

文学から映画へ形を変えて継承・更新される物語

文学部 4年生石山航太さん

英米文学作品研究Ⅱ:物語更新理論(Narrative Renewal Theory)を軸に、まずその理論的独自性と物語研究における実践可能性について解説します。それを手がかりとして、アメリカ文学の主要作品と、その映像化作品を考察の主な対象として取り上げ、その鑑賞と分析を通じて、文化としての物語受容と創造の問題を考えるための新たな文化・文学研究の方法論について理解を深めます。 文学部 開講科目。

文学作品が原作の映画から物語論を展開

所属している文学言語学科英米文学英語学専修で取得することが必要な科目の一つで、3年生の春学期に受講しました。「英米文学作品研究」は2年次から履修できる15~20人ほどの少人数制の授業で、詩や小説、劇作品などの英米文学作品を専門的に読解・分析していく内容のものが多いです。

そんな中、片淵悦久・文学部非常勤講師(大阪大学大学院文学研究科教授)の授業では文学作品と、それを原作とする映画を取り上げました。先生が提唱する「物語更新理論」を軸に、文学作品が映像作品へと形を変える過程で、物語がどのように表現され、継承されていったのかを検証します。
 

時代や監督ごとに異なる映画の演出

初めに、一つの物語が形を変えて再生産されていく現象を解明する「物語更新理論」について学んだ後、映画を鑑賞しながら先生の解説を聞きます。

例えば、1968年に公開された映画「ロミオとジュリエット」は、原作であるウィリアム・シェークスピアの劇作品の内容に沿って作られています。一方、1996年公開の「ロミオ+ジュリエット」は、14世紀イタリアの貴族同士の対立を現代のブラジルでのマフィアの抗争として描くなど、設定が大きく変更されています。そこには制作された時代背景や監督の意向などが影響しているのですが、設定を変えても同じ作品を原作としていることが分かるのは、物語を象徴する重要な要素が受け継がれているからです。

このように、視覚情報がない文学作品に対する「メンタル・イメージ」や物語に共有される世界観が、映像化によってどのように更新されていくのかを分析していきました。
 

物語が更新される現象を自分なりに解釈

授業の終わりに、映像化によって物語が更新された文学作品を自分で選び、5,000字程度で論じるリポート課題が出されました。

私はアメリカの小説家、F・スコット・フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」と、2013年公開の映画「華麗なるギャツビー」を取り上げました。同作を基にした映画はそれまでにも数多く制作されていますが、2013年度版は豪邸で開かれるパーティーのシーンなど壮大な演出が特徴的です。原作小説にはそこまでの描写はなく、なぜそのような演出がなされたのかを自分の解釈を交えて記述しました。

解釈の根拠を述べるためにはそれぞれの作品が生まれた背景まで調べる必要があり、リポートの作成は大変でした。
 

自身の研究対象へのアプローチの参考に

構成は同じでも、映像化や時代を経て全く違う作品となった時、なぜそうなったのかを理論立てて分析する研究方法や着眼点などは、一つの文学作品を読み解く卒業論文の研究にも生かせるのではないかと考えています。

日常生活においても原作のある映画を見る時に、「これはもともとどういう作品だったのだろう」と、これまでとは違った視点で鑑賞できるようになりました。英米文学に興味がない人も面白いと感じられる授業だと思います。
 

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